2026.10.27病院・介護施設の採用ブランディングとは?─必要な理由と進め方、成果につながった事例

病院・介護施設の採用ブランディングとは、職員の働く姿や職場の価値観を発信し、「ここで働きたい!」と思う求職者を増やす取り組みです。
看護師や介護職といった専門職の採用では、給与や福利厚生といった条件面で、他院と大きな差をつけることが難しくなっています。そのため、条件だけでは伝わらない「その病院らしさ」「うちの施設ならでは」を言語化して届けられるかどうかが、応募数と職員の定着の両方を左右します。
本記事では、病院・介護施設の採用支援を専門とする私たちMottoBrandが、採用ブランディングの考え方と進め方を、実際の支援事例とともにご紹介します。
病院・介護施設の採用ブランディングの定義
採用ブランディングとは、「ここで働いてみたい」という自院のファンを増やすマーケティング手法です。
求人広告が「いま募集していること」を知らせるのに対して、採用ブランディングは「どんな病院・施設で、どんな人が、どんな思いで働いているのか」を伝えます。
| 求人広告 | 採用ブランディング | |
| 目的 | 募集を知らせ、応募を集める | 自院/自施設を選ぶ理由をつくり、共感した人を集める |
| 伝える内容 | 給与・勤務時間・福利厚生などの募集要項 | 職員の働く姿、成長の過程、職場の価値観 |
| 主な発信場所 | 求人媒体、ハローワーク、人材紹介会社 | 採用サイト、職員インタビュー記事、パンフレット、説明会資料 |
| 効果の出方 | 掲載している間に応募が集まる | 時間をかけて積み上がり、ほかの採用経路の成果も底上げする |
希望条件に合う病院・介護施設が複数あるとき、求職者は病院・介護施設のイメージで応募の優先順位をつけます。その「選ばれる理由」を、自院の発信でつくっていくのが採用ブランディングです。
病院・介護施設に採用ブランディングが必要な理由
病院・介護施設に採用ブランディングが必要なのは、医療の質を支える「人」の確保が、条件面の競争だけでは難しくなっているからです。
・価格で差をつけられない、医療・介護という仕事
医療・介護のサービスは、診療報酬・介護報酬の制度のもとで提供されます。一般企業のように価格で競争することはできず、患者さんや地域から選ばれ続けるには、サービスの質を高めるしかありません。そして、その質を担うのは職員一人ひとりです。
私たちは、医療・介護の世界では「働く人の魅力」と「組織のカルチャー」こそが、ほかでは簡単に真似できない競争力の源になると考えています。
・条件だけでは「どこも同じ」に見える現実

給与や福利厚生、教育体制といった条件だけで訴求すると、病院・介護施設は求職者の比較表の一マスに押し込まれてしまいます。近年はどの病院・介護施設も看護師/介護職採用に力を入れ、待遇を整えています。条件面だけでは、違いが伝わりにくくなっているのが現状です。
実際には、職場の雰囲気や理念、キャリア支援のあり方は病院・介護施設ごとに大きく異なります。その違いを、働く職員の姿を通して伝えることが大切です。
→ 関連記事:採用ブランディングを成功させるための、採用サイトの作り方
・採用専任者の不在と、離職・採用のくり返し

病院・介護施設の採用に伴走する中で、私たちは多くの現場に共通する実情を見てきました。
- 採用専任の担当者がおらず、看護部長や事務長が本来の業務と兼任している
- 自院/自施設の魅力を、どんな言葉で届ければよいか分からない
- 表面的な情報だけで採用し、入職後のミスマッチから離職と採用をくり返している
・人材紹介への依存と、高止まりする採用コスト
自院/自施設の魅力を発信できていないと、採用は人材紹介会社や有料の求人広告に頼らざるを得ません。紹介手数料は採用1名ごとに発生するため、採用人数が多い病院・介護施設ほど負担が大きくなります。
採用ブランディングで得られる効果
採用ブランディングの効果は、応募数の増加にとどまりません。ミスマッチの減少、採用コストの削減、ほかの採用経路の成果向上にまで及びます。
・応募数の増加
職員の姿が見える採用サイトは、条件の近い病院・介護施設を比べている求職者に「ここに応募したい!」と思ってもらうきっかけになります。
・ミスマッチと早期離職の減少
選考の前に職場を深く理解した応募者が増えるため、入職前後のギャップが小さくなり、内定辞退や早期離職が減ります。
支援先の病院からは、「面接に来る求職者のほとんどが、先輩インタビュー記事を事前に読んでいる」という声をいただいています。職場を理解したうえで面接に臨むため、面接の質も上がります。
入職後の早期離職は、教育を担う先輩職員の負担も増やします。採用の段階でミスマッチを減らすことは、いま働いている職員を守ることにもつながります。
・採用コストの削減
採用にかかった費用や、受け入れ側の教育コストを含めると、職員1人の離職による損失は約200〜300万円と私たちは推計しています。
自己応募で採用できる人数が増えれば、紹介手数料も大きく減らせます。支援先の病院では、次のような成果が出ています。
| 成果例 | |
| 新卒採用 | 26卒は人材紹介会社経由で8名を採用。一方、27卒は自己応募のみで採用目標を達成し、約480万円(約60万円×8名)の紹介手数料が不要に。 |
| 中途採用 | 自己応募で3名を採用し、約300万円(約100万円×3名)の紹介手数料が不要に。 |
| 新病院のオープン | オープンに必要な看護師を、すべて採用サイトからの応募で確保。紹介手数料は0円。 |
・ほかの採用経路への波及


求人媒体、人材紹介会社、就職説明会、職員の紹介など、どの経路で病院を知った求職者も、応募の前には採用サイトで職場を確かめます。そのため、採用サイトの内容は次のような数字にも影響します。
- 求人媒体からのエントリー数、人材紹介会社からの紹介数
- 病院/施設見学のエントリー数、就職説明会での面談数
- スカウトの返信率
- 書類選考・面接の通過率、内定承諾率
求職者がどこから病院・介護施設を知っても、最後に確かめに来る場所として、採用サイトの役割はさらに大きくなると考えています。
病院・介護施設の採用ブランディングの進め方
採用ブランディングは、現状把握から公開後の運用まで、大きく5つのステップで進めます。
ステップ1 現状把握と採用戦略の整理
最初に、これまでの採用実績を整理します。どの経路から何名の応募があり、何名採用できたのか。人材紹介会社や求人媒体にどれだけ費用をかけているのか。データで見ると、自院/自施設の採用の課題がはっきりします。
あわせて、欠員補充・増員・新規開設といった募集の背景と、採用目標の人数・期限を確認し、何を優先するかを決めます。
→ 関連記事:採用戦略は、トレードオフ─「全部ほしい」ではうまくいかない
ステップ2 職員インタビューによる強みの発見
次に、現場で働く職員へのインタビューを行います。病院・介護施設の担当者が「当たり前だ」と思っていることの中に、求職者にとっての魅力が眠っていることは少なくありません。弊社が採用ホームページを制作させていただいた岸和田徳洲会病院様では、20名以上の看護職員に取材し、病院の魅力を言語化しました。
ステップ3 採用ターゲットとコンセプトの設計
インタビューで見えた強みと、採用したい人材像を照らし合わせ、発信の軸となるコンセプトを決めます。
このとき私たちが大切にしているのが、いま活躍している職員を「ロールモデル」として発信の中心に据えることです。採用したい人材が「数年後の自分」を重ねられる職員を選ぶことで、求職者は入職後の自分の姿を具体的に思い描けるようになります。
→ 関連記事:採用ブランディングは、ロールモデルで設計する─応募が集まらないのは「伝わっていない」から
ステップ4 採用サイトと広報ツールの制作
コンセプトをもとに、採用サイト、職員インタビュー記事、パンフレット、就職説明会の資料などを制作します。凝った演出よりも、職員のリアルな声や最新の募集情報など、求職者が知りたい内容を充実させることを優先します。
ステップ5 公開後の運用と改善

採用サイトは、公開してからが本番です。採用状況やターゲットに合わせてインタビュー記事を追加し、見学会や募集の情報を随時更新します。八尾徳洲会総合病院様では、公開時に6名だった先輩インタビューが17名まで増えました。
人材紹介会社への情報提供や、応募数・採用数の定期的な振り返りも、このステップで行います。
採用ブランディングで陥りやすい失敗
・作って終わりの採用サイト
公開した時点がいちばん情報の充実したサイトになり、その後は採用イベントの告知しか更新されない。こうしたケースは少なくありません。更新が止まったサイトからは、職場のいまの様子が伝わりません。
・「人」が見えない発信
理念や制度の説明が充実していても、そこで働く人の姿が見えなければ、求職者は自分が働くイメージを描けません。特に看護師や介護職は、勤務体制などの条件が似た職場同士で比べられやすい職種です。「どんな先輩が、どんな思いで働いているのか」が決め手になります。
・「全部ほしい」採用戦略
「良い人を、早く、安く採用したい」と、すべてを同時に求める方針では、採用はうまくいきません。何を優先し、何を割り切るのかを、経営層とすり合わせておくことが大切です。
・院内を巻き込まない進め方
採用ブランディングは、採用担当者だけでは完結しません。インタビューに協力する職員、見学を受け入れる現場、面接を担う師長など、多くの職員が関わります。私が支援させていただいている病院では、師長会でコンセプトを共有し、現場の看護師の皆さまと一緒に採用活動を進めています。
院内で共有されたコンセプトは、職員が自院の魅力をあらためて知るきっかけにもなります。採用ブランディングは、職員の定着を支えるインナーブランディングとも深くつながっています。
病院の採用ブランディング事例
岸和田徳洲会病院様(大阪府岸和田市/三次救急・400床)
高度急性期の環境で成長する看護師の姿を伝えるため、新卒の若手看護師、診療看護師(NP)を目指す看護師、出産・育休を経て働き続ける看護師など、20名以上の看護職員に取材しました。
採用サイトのリニューアル後、資料請求・病院見学・インターンシップのエントリー数は前年度比255%、採用試験の応募数は前年度比188%になりました。前年は採用目標に届いていませんでしたが、リニューアル後の年度は目標を大幅に上回る採用実績につながっています。
→ 事例の詳細:岸和田徳洲会病院様 看護師採用サイト制作事例
誠仁会グループ 大久保病院様(兵庫県明石市/ケアミックス・199床)
募集要項だけが載っていた採用情報を刷新し、新卒看護師、子育て中の看護師、入職後に認定看護師を取得した看護師など、13名の職員のストーリーで職場の魅力を伝えました。
公開から約10か月で110名のエントリーがあり、エントリー総数は前年比365%、採用数は前年比343%となりました。
→ 事例の詳細:大久保病院様 看護師採用サイト制作事例
八尾徳洲会総合病院様(大阪府八尾市/二次救急・475床)
ローテーション研修や院内留学、離島・へき地医療への応援など、充実した制度の説明が中心だった採用サイトを、「制度を通じてどんな成長ができるのか」が伝わる内容に一新しました。
新卒の採用試験エントリーは前年同時期比 約3.4倍となり、夏の時点で前年度の新卒入職者数に並ぶ採用が決まりました。
→ 事例の詳細:八尾徳洲会総合病院様 採用ブランディング・採用HP制作・採用コンサルティング事例
そのほかの病院の実績

都市部の病院だけでなく、人口12万人ほどの地域にある病院でも、採用サイトをきっかけに看護師やリハビリ職の採用が決まっています。
採用ブランディングにかかる期間と費用
採用サイトの制作期間は、最短で2〜3か月程度です。取材する職員の人数やページ数によって前後します。
MottoBrandでは、採用サイト制作の初回契約に、必ず1年間のサイト運用を含めています。公開後もインタビュー記事の追加や情報の更新を続け、採用サイトのコンテンツを充実させていく支援を徹底しています。
凝ったデザインではなく、採用活動と連動させたサイト運用・コンテンツの充実化をコンセプトにしているため、複数のデザインテンプレートを活用しての制作をご提案しています。そのため費用については、150万円〜200万円程度の初回御見積が大半です。病院・介護施設の採用状況をお伺いしたうえで、お見積もりをご提示しています。
病院の採用ブランディングに関するよくある質問
小規模な病院でも効果はありますか?
あります。人口約12万人の地域にある100床未満の病院では、採用サイトの公開から13か月で14名のエントリーがあり、7名の採用につながりました。看護師だけでなく、理学療法士や作業療法士、社会福祉士の応募も集まっています。
人材紹介や求人媒体と併用できますか?
併用が前提です。魅力を言語化・発信できている病院ほど、求人媒体や人材紹介を通じた出会いも成果につながりやすくなります。採用ブランディングは、あらゆる採用経路を活かすための土台です。
効果が出るまで、どのくらいかかりますか?
病院の規模や地域、募集職種によって異なります。これまでの支援では、大久保病院様が公開から約5か月で52名、大阪市内の200床規模の病院が6か月で48名のエントリーを獲得しています。
院内/施設内に採用担当者がいなくても進められますか?
進められます。採用専任の担当者がいない病院・施設は少なくありません。私たちは取材や制作だけでなく、採用状況の振り返りや人材紹介会社への情報提供など、公開後の採用活動にも伴走しています。
介護施設でも同じ考え方は使えますか?
使えます。介護職は、サービス形態や勤務体制が似た事業所同士で比べられやすい職種です。病院と同じように、職員の姿を通して職場の魅力を伝える採用ブランディングが効果を発揮します。
この記事を書いた人|福井 勝雄(株式会社MottoBrand 代表取締役)
2006年、株式会社エス・エム・エスに新卒入社。介護職・看護師専門の求人広告の法人営業、看護師転職サイトの事業責任者、医療機関・介護施設向け採用コンサルティング事業の西日本エリア責任者を経て、2021年5月に株式会社MottoBrandを創業。全国の病院・介護施設の採用ブランディング、採用サイト制作を支援しています。
→ 会社概要・代表挨拶
自院の魅力を、採用につなげたい病院・施設様へ
「自院/自施設の強みが何なのか、整理できていない」「採用サイトはあるが、応募につながっていない」「人材紹介に頼らない採用経路をつくりたい」
そうしたお悩みをお持ちでしたら、まずは現状をお聞かせください。職員インタビューの企画・取材・ライティングから、採用サイトの制作、公開後の採用活動まで、病院・介護施設に特化してトータルにご支援いたします。
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